雪舟焼とは

島根県西部、石見地方で作られる石見焼きは、18世紀頃より、「はんどう」と呼ばれる大型水瓶をはじめ、塩壺、漬物壷など貯蔵用容器などを量産してきました。粘着性の高い都野津層の粘土を使用しているため、塩分や酸、アルカリに強い特性があるためそうした製品に向いていたのです。
こうした石見焼きの技法を取り入れながら、雪舟窯は独自の表現を追求しています。

雪舟焼の特徴

雲模様・独特の釉薬表現

雪舟窯の作品は、土色の肌に独特の雲模様を施すなど、釉薬や仕上げに工夫が凝らされています。素朴な土の温かみと独自の美的感覚が融合し、釉薬の調合や焼成法によって多彩な表情を持つ器を創出。伝統に根ざしつつも、手に取りたくなるモダンな魅力を備えた焼き物が特徴です。

現代に応じた多彩な器づくり

雪舟窯は、伝統的な壺やかめに加え、茶器や皿、鉢、マグカップ、花器など、現代の暮らしに寄り添う器を制作しています。三代目は別の道から修行を経て窯を継ぎ、画僧・雪舟の精神を陶芸に映す姿勢で創作。伝統を尊重しながらも、現代の感性と生活に調和する柔軟な作風が魅力です。

高温焼成による高い耐久性

雪舟窯は、地元産の良質な陶土を用いる石見焼の伝統を受け継ぎ、高温で焼成することで硬質で耐水性・耐酸性・耐塩性に優れた器を生み出しています。かつては漬物かめや水がめなどの実用品が主でしたが、その堅牢さと実用性を活かし、現在は皿や鉢、マグカップなど日常使いの食器にも展開しています。

「雲模様や豊かな釉薬表現による、詩情と個性のあるビジュアル」

雪舟窯では「雲(くも)」をモチーフにした模様 — 飛び雲や乱れ雲など — を釉薬や焼成実験を通じて創案。「雲水」のようにとらわれず、自由な心を表すという理念を、器の表面に映し出しています。 さらに、土の質感、釉薬の調合、焼成法の選択など、素材や技術に対する丁寧なこだわりによって、一点ごとに個性や雰囲気の異なる器が生まれます。結果として、同じ形でも「表情が違う」 — つまり“手に取るたびに違いを楽しめる” — という、工芸としての豊かな多様性が作品の大きな魅力となっています。

「伝統の石見焼を引き継ぎながら、モダンな日常器へ昇華」

伝統的な石見焼の技法・素地を尊重しつつ、茶器や花器に限らず、マグカップや皿、コーヒー碗皿など“現代の日常生活で使いやすい器”を積極的に手がけています。 一つひとつを手作業で成形し、焼き物としての堅牢性を保ちつつ、「使いたくなる・手に取りたくなる」ようなデザイン性・使い勝手を備えた器づくりを行っており、伝統と現代性のバランスが取れた作風です。

三代目 – 福郷 生雲 Ikumo Fukugo

1973年(昭和48)島根県浜田市出身。
高校卒業後、愛知県の陶芸の専門学校を卒業。広島県の自動車工場で勤務したのち、再度、陶芸の道を目指すべく、1995年(平成7)、岐阜県・岸本謙仁氏に師事。

1998年(平成10) 土岐市「織部の心」作陶展大賞受賞。
2000年(平成12) 日本伝統工芸東海支部展入選。
2001年(平成13) 家業である雪舟窯就業、雪舟窯3代目となる。
2006年(平成18) 茶の湯の造形展入選。

二代目 – 福郷 悠作 (伝統工芸士)

1976年(昭和51) 島根県総合美術展銀賞
1977年(昭和52) 同 金賞
1978年(昭和53) 新協展 新人賞
1980年(昭和55) 同 金賞
2000年(平成12) 通商産業大臣認定伝統工芸士
2017年 経済産業大臣功労賞受賞

初代 – 福郷 柳仙

画僧雪舟に深く傾倒し、その世界観を陶芸に反映したいという思いから、禅を学ぶ初代・福郷柳仙が1945年(昭和20)にここ浜田市旭に窯を築く。1700年代から続く石見焼きの伝統を踏まえ、雪舟の芸道の心を釉薬に潜ませるべく、独自の錆雲、小波釉雲の技法を考案した。